現在サイトを再構成中です

自然素材で自然な眠りをめざす布団屋を始めたワケ

目次

1983年に帰ってきたときに思ったこと

大学を卒業、3年間取引先での研修を終えて故郷長浜へ帰ってきたのは1983年のこと。ちょうど長浜城が再興された年です。高度成長期の真っ只中で、売上は上がっていました。

現在の曳山博物館の通りは西友とパウビルがあり、その隣でした。長浜で最も賑やかな通りだったのです。毎月1回はチラシを入れ、売出しをし、キャンペーンイベントをして売上を稼ぐ、そんな時代です。

その時に考えていたのは、「今は一店舗のみだけど、他店舗展開して売上をさらに拡大したい」ということでした。当時を考えると無理もないのですが、今から思えば安直でした。

バブル崩壊から始まった激安時代

1993年頃にバブルが崩壊するとともに、流通構造も大変革が生まれました。GMS(総合量販店)からユニクロなどに代表されるSPA(製造小売型)専門店が台頭します。

アジアで製造したものが激安価格で販売されるようになり、円高ということもあってこの渦に巻込まれました。当時の経営コンサルは「とにかく客数をかせぐ、シェアを取ることが第一」とばかりに安売りをすすめたのです。

特価9,900円の羽毛布団-今から考えたら目をそむけるような安物を扱い始めました。激安品から高額品までのフルライン展開です。

もちろん良いものも扱っていましたが、そこには「どうやったら売れるか、売上が上がるか」という視点で高品質なものを扱うことはあっても、「お客様に快適な眠りを提供します」という視点はありませんでした。

主要取引先の倒産からはじまる新たな勉強

寝具店の多くは、大手寝具メーカーのボランタリーチェーンに参加して、一種の系列化が行なわれていました。寝具店独自で商品開発をするわけでもなく、川上のメーカーからやってくる製品を仕入れ・販売するというスタイルです。

ところが1990年後半、メインの取引先が倒産します。たまたまどうしても必要な品物があって、その取引先に納めていた工場を紹介してもらい、訪れたのです。ウール製品を扱う工場でした。

そこで、初めて羊には世界で何百種類もの品種があること、育てている地域の環境やエサなどによって同じ品種でも違いがあること、掛布団に最適な品種、敷布団に最適な品種があることなどなど・・・。恥ずかしいことながら、そんなことすら知らなかったのです。

ヨーロッパを訪れて価値観がごろっと変わる

そんな時に、ドイツ・ビラベック社を訪問してみないか、というお誘いを受け15年ぶりにヨーロッパの地を訪れました。グースを育てる農場、国立農業大学の研究所、羽毛や羊毛ふとんを作る工場を回りました。

元々ヨーロッパは環境問題に厳しく、自然素材を重視する風土があります。「あれ、こっちのスタイルの方がしっくり来る」 今までの価値観ががらっと変わったのです。

元々羽毛布団については、早くから羽毛リフレッシュマシンを設置して、オリジナル羽毛布団づくりに取りかかっていたこともあり、メーカーに頼るのではなく、自分が販売したい布団をオリジナルで作る、という方向性が定まってきました。

高機能を謳う合成繊維は大量生産ができます。その一方で、丁寧に育てられた自然素材は量が多く得られません。専門店としての活きる道はここにあり、そう感じる旅でした。そして、2000年から、毎年ヨーロッパの展示会や、工場訪問を行なうようになります。

ヨーロッパでも自然素材を大切にした品づくりを行なっている会社は、大規模な会社よりは、どちらかというと小さなファミリービジネスであることが多いのです。

お互いが価値観を共有して、モノづくりにかける彼らのポリシーを伝えることができるのも、直接コンタクトを取り、小さいながらも毎年仕入を行なうことをするからです。

2000年は当社にとって創業110年目の年でしたが、新しい取組を始める新たな一ページとなったのです。

睡眠のしくみを学び始める

ちょうどその頃、縁あって日本睡眠環境学会の睡眠環境コーディネーターのセミナーに参加して、睡眠の勉強を始めました。驚くことに(恥ずかしいことに)、睡眠のための寝具を扱っているにもかかわらず、睡眠のしくみについては全く知らなかったのです。

日本睡眠環境学会では、睡眠のための環境=寝室や温度、光、寝具の性能について研究者が集います。横浜国大の川島先生、近畿大学の梶井先生などに、いろいろと勉強をさせていただいたのです。

その一方で、滋賀医科大学には日本で初めて睡眠を総合的に扱う睡眠学講座が生まれました。医療の世界でも、睡眠についてはさまざまな部門に分かれていたのです。

主任教授である宮崎先生に従って、睡眠指導士(現・睡眠健康指導士)の勉強を始めました。こちらは日本睡眠学会を始め医療関係者の方々が多く、中級・上級になるにつれ、専門用語が増えます。最終的には4日間の講習と試験を受けて睡眠指導士の上級を取得しました。

この2つの流れを学びながら気が付いたのは、睡眠学会系の専門医の先生方は寝具に付いての知識をほとんどお持ちでないことでした。一方睡眠環境学会系は、睡眠というヒトのしくみについての考察がまだまだ十分ではないようでした。この両方をつなげることが寝具店としての使命ではないのか、そのように考えたのです。

つづく

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次