
脳を創るレム睡眠、身体を創るノンレム睡眠

眠りにはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類あって、約90分周期になっていることは比較的よく知られています。この2つの睡眠はメカニズムが異なります。
三つ子の魂百まで-レム睡眠は脳を創る
レム睡眠の時には記憶を整理すると言われます。一日に入ってきたさまざまな情報を整理して記憶域にしまいます。ですから、新生児のレム睡眠は50%、3歳ぐらいになってようやく20%ぐらいになります。生まれて入ってくる映像や言葉など新しい情報が多いからでしょうか、「三つ子の魂百まで」ということわざがありますが、3歳ぐらいまでに身についた行動パターンは忘れないといいますから、脳の形成に大きく影響があることを暗示しています。
寝る子は育つ-ノンレム睡眠は身体を創る
一方ノンレム睡眠は脳を休める睡眠です。最初の深いノンレム睡眠時には成長ホルモンが大量に分泌されます。その一方で発汗量も最も多いのです。成長ホルモンは身体を創るために重要な役割を果たします。

子どもは暑がり、一番大切なことは汗の吸湿と発散

ヒトの基礎代謝量は乳幼児が最も大きく、年を取るとともに低くなってきます。子どもはたくさん汗をかきながら、成長ホルモンを分泌させ、身体を成長させるのです。汗の吸湿と発散のメカニズムがうまく行かないと、蒸れが多くなり睡眠の質が低下します。
下のグラフのように、ノンレム睡眠が浅いと成長ホルモンの分泌は抑えられます。吸湿発散性が悪いと 発汗量が多い→蒸れる→不快になる→眠りが浅くなる→成長ホルモンの分泌が抑えられる という悪循環を起こしやすいのです。

よく「寒そうだから」といって、何重にも布団を掛けたり、フリースなど合成繊維のパジャマを着せたりしているケースがあります。子どもは基本的に暑がりですから、蒸れると布団から飛び出して、その結果風邪を引くという笑えない結果になります。皮膚表面で素早く汗を吸い、それを素早く発散して、蒸れの少ない睡眠環境を作ることが一番大切なことです。
吸湿発散性の良い素材を選ぶことが大切
羊毛(ウール)だと成長が速い?
ウールはシルクに次いでヒトに皮膚に近い素材です。保温性が良く、汗の吸収発散性が良いので、古来よりずっと使われてきました。最近はウォッシャブル加工をしたウールも増えているので、取り扱いが楽になっています。
イギリスのオックスフォード大学での研究では、未熟児に対して、ウールとポリエステルのふとんでの生育を調べた結果、ウールのほうが成長が大きいという結果がでています。これも吸湿性の悪いポリエステル繊維に比べ、ウールの吸湿発散性が優れているため、寝床内の湿度が抑えられ、結果的に成長ホルモンが多くでる、良質な睡眠がとれたからではないかといわれています。
ウールの良さを活かすには、できるだけ通気性の良いニット生地を使ったものがおすすめです。
絹(シルク)は肌にやさしい
シルクはセリシンとフィブロインというタンパク質でできていて、最もヒトの皮膚に近い繊維です。そのため、肌にやさしく、過敏症の肌にはおすすめの素材です。一方、洗いにくい、耐久性が劣るという短所もありますで、他の素材との組合せで、皮膚に近いところに使うのがいいでしょう。
綿(コットン)は吸湿性にすぐれている
綿も吸湿性に優れた素材です。ただ、発散性はウールなど動物性繊維に比べると劣りますし、保温力もあまりありませんが、ポピュラーな素材です。布団の中わた素材としては、乾燥が十分であればおすすめですが、毛布やカバーなど
羽毛(ダウン)は暖かくて快適
ダウンも吸湿発散性に優れた素材です。ただ、グレードによって羽毛ゴミの量がかなり異なります。ゴミの少ない高品質なダウンを選ぶことをおすすめするとともに、その良さを活かすためには、通気性の良く、吸湿性の早い生地が望まれます。ポリエステル混の生地ではなく、綿100%の平織が理想的です。平織生地なら丸洗いしても比較的問題がありません。
具体的な寝具の選び方
敷寝具は上層はウール、下層は中空素材マットレスの2枚敷
発汗が最も多いのは背中です。敷には素早い吸湿発散性が求められます。身体に近い上層には、吸湿発散性が良くて湿度のコントロールが得意なウールがおすすめです。一方下層は、ウレタンなどのマットレスだと、湿気がこもってカビやすくなるので、ブレスエアー等の中空素材にするのがベストです。
脱脂綿のパッドなどを使うと、吸湿性をさらにアップさせるとともに、おねしょをした場合の対策にもなります。
掛け寝具もニット生地のウールか、中厚の羽毛布団
掛け布団も基本的には同じです。湿度のコントロールを考えると、ニット生地のウール100%わたが最も優れています。次いで、中厚か合掛けぐらいの羽毛布団がいいでしょう。市販品の厚さでは暑がるケースが多いのです。ガーゼ生地の真綿布団(シルクわた)もおすすめですが、丸洗いなどに向いている素材ではありません。
丸洗いやリフォームなどメンテナンスも考えると羽毛布団が現実的な選択肢になります。ただ、側生地がポリエステル、あるいはポリエステル素材だと通気性が悪く蒸れやすくなります。できるだけ軽い綿100%の側生地を使った、ホコリの少ない羽毛を使ったものがおすすめです。
ポリエステルなどの合成繊維は極力避ける
基本的にポリエステルなど合成繊維は汗を吸いません。丸洗いしやすい等の理由からポリエステルわたの寝具をお子さんに使うケースが少なくありませんが、脳と身体の成長を考えると適しているとはいえません。
成績も睡眠の質で向上する

上のグラフはアメリカの高校での睡眠時間と成績の関係です。睡眠時間が多い方が成績が良く、また、就寝が遅い(おそらく生活習慣が乱れている)方が成績評価が良くないことがわかります。

レム睡眠は脳の情報を整理するための睡眠といわれています。毎日入ってくるさまざまな情報を整理し、長期記憶や短期記憶へと整理し固定化します。繰り返し入ってくる情報は長期記憶に残されます。自然なリズムの睡眠がとれていることが、記憶にも重要なのです。
朝練は身につかない?
情報は文字や映像、音だけではありません。逆上がりができるようになった、などの運動のための情報もレム睡眠に関係してきますから、身体に技術を覚えさせるのであれば、夜に練習した方がその後に睡眠に入るので効果的でしょう。